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コバタクの経営はつらいよ。ー株式会社Blanc.Cさまー

コバタクの経営はつらいよ


こんにちは!小林ことコバタクです。

2022年6月の朝、下野新聞をめくっていくと、しもつけ随想のコーナーに目がとまりました。舘野知紘(たてのちひろ)さんという方が記事を書いていたのですが、文書を読み進めていくと考え方や言葉の使い方に圧倒されました。これは、コバタクの経営はつらいよ。の記事で書きたいと思い、Twitterを通してコンタクトをとりインタビューをすることができました。

ー 舘野さんの経歴と事業内容について ー
# 経歴
2018年栃木県立宇都宮女子高校在学2年時に第6回とちぎアントレプレナーコンテストに出場し、1052件のエントリーから最優秀賞に選ばれる。3年時2019年9月にジェンダーフリーアパレルメーカー株式会社Blanc.C(ブランドットシー)を設立し、虎ノ門にてブランド初の展示会を開催。2020年宇都宮女子高校を卒業。栃木銀行主催第5回とちぎんビジネスプランコンテストにて特別賞(3位)、東京女子大学ビジネス・プランニングコンテストにて最優秀賞を受賞。2022年よりロンドン芸術大学へ進学しFine Art(現代アート)を専攻する。
# 事業内容
ジェンダーフリー=〈男らしさや女らしさといった概念に捉われず、自分の生き方を自己決定できるようにしようという考え方〉に基づいて、これまでのレディース・メンズという枠組みに捉われない装いを発信するアパレル。中性的なデザインを主軸として全商品を男女兼用として販売することで、セクシャルマイノリティを含め全ての人がより自由で創造的に生きられる社会を目指す。
# URL
http://blanc-c-tokyo.com/

自分らしい生き方を服を通して社会に

小林:本日は、よろしくお願いします!

舘野:よろしくお願いします。

小林:早速ですが、株式会社Blanc.C(ブランドットシー)という社名の思いを教えて頂けますか?

舘野:Blancはフランス語で「白」という意味です。これまでのジェンダーの壁を白紙に戻して、全ての人が自分らしく生きられるようにという思いを込めました。後に続くCは私自身の名前Chihiroからとったものです。

小林:どんな仕事をされているんですか?

舘野:株式会社Blanc.Cは、一言で言うと「ジェンダーフリーアパレル」というものになります。発展途上ではありますが、フォーマルスタイルを取り扱うFレーベルとカジュアルスタイルを取り扱うCレーベルの2つを展開していくことがブランドの基礎になっています。公の場での自由な装いが課題解決の肝になるため、事業の制服やイベント用のシャツをデザインすることからはじめています。また、デザインから生産の過程を検討していく上で、個人の方を対象にオーダーメイドで服を製作させていただいたりもしています。

小林:デザインは1からつくるのですか!?

舘野:はい、そうです。要望があればそれに応えられるようにもしています。

小林:一着つくるのにどれくらい時間がかかるのですか?

舘野:オーダーから納品まで約3ヶ月でしょうか。2ヶ月半ほどでデザインを決定し、縫製に2〜3週間、そして納品という流れになります。

小林:案件を依頼された時、ヒアリングはどのように行なっていますか?

舘野:まずは、依頼の時点でのお客さまのビジョンを伺います。用途や季節感、デザインに期待していることなども基本的かつ重要な要素ですね。ただ、単なるユニフォーム製作会社ではなく自身のブランドの事業として対応させて頂くため、私自身の感性やブランドイメージは必ず投影してデザインするようにしています。

好きな服を好きなように着ることのできる社会を目指して

小林:ジェンダーフリーファッションへ向かった経緯を教えてください。

舘野:私服登校ができる女子校に通っていたことで服と向き合う機会が増えました。当時メンズの服に興味があったのですが、お店を覗きにいくと”プレゼント用ですか?”と店員さんに声をかけられたりそもそもメンズとレディースでフロアが分かれていたりしたんですね。ここではじめてジェンダーの壁や、その先にある問題について関心を持つようになりました。

小林:ジェンダー問題は様々ですが舘野さんからは、多くの人に自分らしく生きて欲しいという思いが本当に伝わってきます。ジェンダーフリーな服は男女兼用の服という認識であっていますか?

舘野:うーん。半分正解です。男女兼用規格の服はユニセックスと呼ばれていますね。ジェンダーフリーという言葉は社会的な性別観に捉われずに生きる、というビジョンのことです。つまり、男性として生まれてきた人でもかっこいい服、中世的な服、可愛い服が自由に選べるという”選択の幅”が鍵になってくると思います。Blanc.Cでは中性的なデザイン、女性的なデザイン、男性的なデザインを用意してその全てを男女兼用として販売するという構想があります。また、店舗を持った場合男女で売り場を分けないということや幅広いサイズ展開を行っていくことも重要です。これによって、これまでのレディース・メンズという区分やサイズの有無を気にすることなく自由に購入できる空間が実現するのではないかと思っています。

夢と目標と課題

小林:起業家になりたいと思ったのはいつ頃ですか? 理由もあれば教えてください。

舘野:中学2年生の時の立志式で、「将来の夢は(社会)起業家」と言ったのを覚えています。具体的なビジネスプランを考え始めたのは高校生になってからですね。
NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」をずっと観ていて、自分の道を極めていく人に憧れを持っていました。また、人と被らないような仕事をしたいという思いが強く、起業家という生き方に漠然とした憧れがありました。

小林:これから、社会の課題に対して舘野さんが実現したいことを教えてください。

舘野:ジェンダーフリー社会を実現したいという思いは変わっていません。しかし自分が作りたいのが、男女兼用の服というような “もの”ではなく、誰もが自分らしく生きるという”こと”なのだと気付いてからはアパレルで服を作ることだけが解決策ではないと考えるようになりました。コロナ禍を経て生産と消費に対する意識にも変化があったと思います。少ない物で豊かに暮らすというミニマル志向や持続可能なものづくりへの関心が同世代の間でも高まり、物が溢れかえる時代のアパレルの意義について考える機会になりました。

小林:具体的な取り組みは行っていますか?

舘野:そうですね。今日着ているシャツは、Blanc.Cの製品第1号として展示会で販売されたものなのですが、海島綿という希少な素材からできています。価格との兼ね合いは常に課題になってきますが、土に還る天然繊維の可能性に目を向けること、その成り立ちを購入者に提示していくことは心がけています。

小林:舘野さんご自身が大切にしている価値観や信念を教えてください。

舘野:人と被らない、という執念(?)が自分を今の場所に導いてくれたと思います。競争が激しいところで上下の争いをするのではなくて、他の人と違う分野・考え方に属すことで横方向に突き抜けることを目指してきました。

小林:これからの道筋を教えてください。

舘野:起業家になるという第一の夢が叶った今、次の可能性として現代アーティストとしての活動を視野に入れています。2022年9月からはロンドン芸術大学に進学するため、在学中に革命的な出会いがあれば、アパレル事業を大幅に推し進めるという可能性もあります。計画性のあるタイプではないので、行動した先にあるチャンスを大切にしたいですね。ちなみに現代アートという分野のねらいは、作品を通じて創作者が自己表現を行ったり、特定の観念、歴史、社会に問いをなげかけたりすることです。

小林:自分を表現した作品、、。

舘野:これは「Light and Shadow」というプロジェクトで製作した人物画です。実物は一見ただの紙なのですが、後ろから光を当てた時に像が浮かび上がってくるんです。臨床心理学の分野における「影」の定義から着想を得ていて、「自己のネガティブな内面=影こそが個人を個人として定義し、人間性を喚起する…」という意図を伝える作品になっています。

小林:すごい、、。すごいしか言葉が出てこないです。アートって深いですね。

小林:経営者として大切にしていることを教えてください。

舘野:これまでやってきたことに捉われずに、「今」の自分の価値観を大切にしていきたいと思っています。

小林:囚われてしまうのでズバッと言えるって凄いです。経営者としての失敗はありますか?

舘野:失敗とまではいかないですが、1人で経営をしていることでしょうか。「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」という言葉の重みをじわじわと味わっているところです。

小林:経営者となる次の世代が同じような失敗をしないために何かありますか?

舘野:起業は1人でもできますが経営は1人では絶望することが多いです。特に学生起業について言えば、同じ立場で一緒に考えてくれる仲間を探すのは事業を”続けていく”上で不可欠なことかもしれません。

小林:絶望、確かに絶望することが多いかも笑

発酵と拡散

小林:経営とはなんでしょうか?

舘野:発酵と拡散というイメージが強いです。自分の中であたためたものを周囲に共有して連鎖的に影響を大きくしていくような感じではないでしょうか。

小林:拡散が思わぬ方向に進んでしまったことはありますか?

舘野:関わる人、応援してくれる人が増えることでそれが徐々にプレッシャーに感じられる時はありますね。でも、プレッシャーを期待と捉えて挑戦し続けたいとは思っています。

小林:素晴らしい経験を積んでいますね。数年後にはさらにとてつもない方になっていそうです!

小林:お勧めの本をお聞きしたところ「14歳からの哲学」を教えて頂きました。

舘野:哲学は万人にとっての真理を追求する学問で、その問いは極めて基本的なことから始まります。特にこの「14歳からの哲学」は読み手の思考力次第でアート・ビジネス・生活など全てのことに応用することができます。哲学という分野に触れたことがない方、視界が一変するような本を探している方に是非読んでいただきたいです。

小林:座右の銘はありますか?

舘野:座右の銘と言えるのかわかりませんが、唯一無二を目指して生きています。普段の持ち物から使う言葉まで、自分なりの理想をベースに調整を続けています。

小林:次の世代に渡したいものはなんでしょうか?

舘野:ジェンダーとアートの分野に身を置いてきたことで、多様性の素晴らしさを実感してきました。「個人が個人として異なるということを楽しめる社会」を自分の活動によって目指し、次の世代に繋いでいけたらいいですね。

小林:落ち込んだ気分をあげる際の食べ物やしていることはありますか?

舘野:落ち込みの原因を探って、その課題を解決してくれそうな本を探すことにしています。(本の)処方が上手くいけば、視点が変えられて急にスッキリしたり悩んでいることが小さく思えたりします。あとは炭酸飲料を飲むことでしょうか!

小林:今日は取材を受けて頂きありがとうございました。舘野さんの応援しますね。

舘野:ありがとうございます。

まとめ

インタビューを始めて数分後に、”私はなぜこんなすんごい方にオファーしたのか?”と心の中で叫んでしまいました。事前のシートや打合せのMeetでも凄いなと感じていましたが、対面で話を聞くと雰囲気からさらに伝わってきました。インタビューを終えた後には、純粋に舘野さんを応援したい気持ちがうまれました。このインタビューと写真を20年後に思い出しながら、舘野さんが出演するNHKのプロフェッショナルを見ていると思います。